ラ・マヒストラル

色んな町を訪れたときに思ったことや考えたことを中心に書きます。所以、放浪記です。写真はこっちに→ http://nkkwu.tumblr.com/

【武蔵小山再開発最前線2019】あれから5年。のびゆくタワマンの足もとで起こりつつあること。

まずは、3年ほど前の2015年10月に私がこのブログで書きかけて、下書き保存したままになっていた以下の文章をお読みいただきたい。

 

きっかけは、車内の会話の盗み聞きだった。

2年ほど前、ほろ酔いで山手線に乗車していたときのことだった。

となりに座っていた若いサラリーマン二人組から飛び出した、「武蔵小山」「開発」というワードは、酩酊し、とろけそうになっていた私をドキリとさせた。

なになに?東急がその開発に関わっているだと?

何やら聞いてはいけない業界裏情報を聞いた気分になって帰宅し、ネットでかちゃかちゃと検索をかけたら、何のことはない。

そんなこと、とっくの昔に決まっていて、もうすでに動き出しているのだった。

武蔵小山はいまの住まいからもわりと近く、ことあるごとに訪れている。

その当時、越してきて約1年であった私は、都内で最長のアーケード商店街があり、その裏側には濃密な飲み屋街を抱えた武蔵小山にすっかり心酔していた。

 

時を経て、2019年。

3年ほど前に書きかけた、その約2年前の再開発への驚きは、やがて、日ごとに高くなるタワーマンションへの驚きへとって代わり、しかしそれもやがてごく当たり前の光景となって、今では何も感じなくなってしまった。

もちろん、上で書いていた「濃密な飲み屋街」こと「りゅえる」飲食街では、かつて下のような風景に出会えたことを、iPhoneの写真整理をしているときに思い出し、ありし日を偲んで惜しんだりもする。

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とはいえ、いくら往時を偲んだところで、今この場所にあるのは建設中のタワーマンションであり、その一帯を取り囲む仮柵には「日本一、感じのいいタワマンへ。」というツッコミどころ満載すぎて、もはや閉口してしまうようなコピーが描かれているだけなのだ。

驚きと嘆きは、すでに過去のものとなった。

 

しかし、その「日本一、感じのいいタワマン」が建設中のすぐそばでは、少々「感じの悪い」事態が現在進行形で起こっていたりもする。

建設中のタワマンは武蔵小山駅に隣接しており、その駅前には広々としたバスロータリーがある。

そのロータリーの端の方には品川区が設置したベンチがあった。

そして、そのベンチには周辺の住民と思われる、やや高齢の人たちのグループがたむろしている光景が何年にもわたって続いていた。

しかし、先日通りがかった時には、そのベンチの周囲が工事用の柵に覆われ、利用できないようになっていた。

そこには、ここは公共の場所であるため、私有物の放置はダメだと言う旨のボードも同時に掲げられていた。

 

真相は分からない。

本当に何らかの私有物が放置されていて、それが他の人の利用の妨げになっていたのかもしれない。

でも、本当にそれが原因なら、私有物を撤去すれば済む話で、ベンチがあるエリアへの進入を禁止する必要はないはずだ。

おそらく、ベンチの周囲で毎日のようにたむろする彼らがおもしろくなかったのだろう。

そこにたむろしていた人たちは、失礼ながら、いかにも町のおじさんおばさんといった感じで、「しゃれた街並み」(武蔵小山再開発の根拠となった都の条例の名前は、なんと「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」!)のイメージからは距離があったのは確かだからだ。

おもしろくないと思ったのが、区なのか、他の周辺住民なのか、はたまた再開発主体なのかは分からない。

しかし、たむろしていた人たちや通りがかりの私のような人にとってみれば、追い出した、追い出されたと感じても無理はない。

いくらタワマンそのものが感じのよい仕上がりになっても、それが出来上がる過程で、その周囲において、すでに「感じの悪い」事態が進行しつつある。

こうして、タワマンへの嫌悪のまなざしは醸成されていく。