新年のトキメキは園田競馬場から
新年早々、園田競馬場にやって来た。
馬始めの結果などさておき、ときめいたことをいくつか記そうと思う。
まず、第一に、入場した途端に感じる場内のひなびた雰囲気である。
これぞ地方競馬!というにふさわしく年季の入った場内は、すでに30年を数える平成の世にあっては、昭和ノスタルジックなものを伝える歴史遺産とまで言って良いかもしれない。
そのような空間であるがゆえ、慣習やルールも遺産のように残されている。
このご時世、街中や娯楽施設でも、狭い狭い喫煙エリアが設定され、それ以外の場所は禁煙というのが通例となっている。
しかし、ここ園田競馬場ではそれが全くの逆!
競走馬に近いコース前のスタンドやパドックでは禁煙だが、それ以外の場所は喫煙可、というより喫煙のお咎めなしである。
同じ地方競馬場でも、クリーンな場内を目指し、「標準化」した空間づくりを進める大井競馬場では、ここ数年の場内大改修で喫煙お咎めなしのエリアは一気に減ってしまった。
ここ園田競馬場こそ、「中央」の推進する施策、空気感から距離おいた、正真正銘の「地方」競馬場だな。
なんて思っていると、今度は場内の隅っこのほうで、ダンボール(人によってはその上に座布団)を敷いてその上に正座やあぐらで、将棋をしているおっちゃんたちに遭遇した。
ときめいてくらくらした。
しかも、足の付いた立派な将棋盤を持ち込んでいる。
そして、顔なじみと思わしき、対局を見守るおっちゃんも数人いる。
100円の入場料を払って、何しに競馬場に来たんだ…と思いかけたが、競馬に飽きたら将棋、将棋に飽きたら競馬と、娯楽をローテーションできるのは意外と快適なのかもしれない…。昔、オリンピック直後の北京を訪れたときに、多くの人が公園で囲碁のようなものを打っていた光景を思い出した。
どちらにしても、関西の将棋文化の根付き方は関東のそれとは比にならない。
こちらも、私のような、園田のFNG(ファッキンニューガイ)は驚いたが、周囲の人は特に気にしていない様子。もちろん、主催者からのお咎めもない様子である。
帰り際、園田競馬場の掲示物やパンフレットの類などに目をやると、最寄り駅からの行き来には無料の送迎バスを利用するよう呼びかけているのが目についた。
最寄りの阪急園田駅からも20分ほど歩かねばならないため、無料の送迎バスはファンにとってもありがたい。
しかし、裏を返せば、それは、大挙して駅と競馬場間の道を歩かれると困るという、近隣からの苦情に対する配慮なのかもしれない。
まして、我々の目的地は、時代の進行を問題にしない、ある意味で「特区」である。
特区のテンションを外界に持ち込むな、ということなのかもしれない。
それでも園田競馬場は特区のままでいい。
そこでは、競馬場外で出来上がりつつある常識のようなものは通用しない。
しかし、それはある意味、競馬場の外の世界のおかしさや脆さを気付かさせてくれる場所でもあるということだ。
日常生活に疲れたり、嫌になったときはぜひ競馬場に行って欲しい。
競馬場がその外の世界に飲み込まれ、一体化してしまう前に。