ある40代の男と
ある40代後半の男と都内のあちらこちらを車で移動することがあった。
御徒町、六本木、代官山。
彼は各街を通り過ぎるたびに、その街で知り合った女との思い出話をとりとめなく話す。
普段はそれぞれに分断された「点」の集まりに過ぎないような街々も、道路を進むことで、ひとつの「線」上に現れる。
過去の思い出もその線ができることで結びつきが取り戻され、時間を大きく前後しながらよみがえる。
けれども、彼の話は、最後には現在の自分のふがいなさを嘆くところに帰る。
「でも、それだけ若い頃に遊んでたことは、ある意味財産なんじゃないんですか?」と聞くに疲れたころに尋ねると、
「金さえあれば、年取ってからでも遊べる。若い頃に将来を考えて、金を持てるようにしてなきゃダメでしたよ。」との返事。
10年後の彼が見た2015年の彼は、どの街にいるのだろう。